なぜ査読が必要なのか?(Why Peer Review?)

この記事はIOG Youtube「IOHK | Why Peer Review?」を翻訳したものです。(2018/06/22動画)

Prof Aggelos Kiayias

(*イタリック文字は私が付け足した部分です又、自然な翻訳を重視して一部省略しています。)

査読の目的は、ある科学分野において、どの論文が最先端の本物の進歩を表しているのか選び出すことです。

暗号学を例にとると、査読プロセスはある貢献がすでに文書化されて存在する暗号の一連の科学研究に照らして、実質的な前進であるかどうかを評価しようとします。したがって、査読は科学的暗号技術が前進する為に使用するコア・プロセスです。

そして、最も重要なことは、国際暗号学会の※Crptoeurope, Asiacryptといったフラグシップ会議が示すように二重盲査読※1(double-blind review)プロセスがあるという点です。

1二重盲検査読ともいう。double-blind review = double-blind peer review

国際暗号学会(IACR)

※動画ではCryptoeuropeと言っているが、恐らくEurocrypt のことと考えられる。

国際暗号学会(IACR : International Association for Cryptologic Research)のフラグシップ会議は次の3つ

・Crypto (flagship)

・Eurocrypt (flagship)

・Asiacrypt (flagship)

では、二重盲検(double blinding)とはどういう意味でしょうか。

基本的に、会議に何かを提出したい場合は、あらゆる点で完成された詳細な原稿を作成する必要があります。すべての主張の完全な立証、それらを裏付ける為に必要な完璧な証明、定理、および補題、そしてすべての主張の信憑性を検証するために必要なあらゆる資料が完全に記述されていなければなりません。

そして、その原稿の背後にいる著者が何者であるかを示さず文書にパッケージして、コミュニティによって選ばれた専門家の委員会に提出します。毎年、会議ごとに異なる専門家40~50人で構成され、彼らは国際暗号学会(IACR)の理事会から任命される2つのプログラム委員長のチームによって選ばれます。選ばれた専門家は、投稿された特定の原稿を審査しますが、その際、著者に対しても匿名です。したがって、最終的に特定の原稿に関する決定(評価)が下される時も専門家の名前は明らかにされません。この二重盲検が、このプロセスを特徴付けているわけです。

この二重盲検の目的は、バイアスをできるだけ少なくすることです。ここで重要なのは、このプロセスが、ある論文が実質的な前進であるかどうかを、できるだけ中立的に判断しようとするものであることを念頭に置くことです。そして、これは第一原理のみで行われる必要があります。言い換えれば、マーケティングや著者の名声、審査する側と原稿を書く側の個人的なつながりに関係するバイアスは、すべてプロセスから可能な限り排除しなければなりません。これは、この二重盲査読(動画ではdouble-blinding reviewing)プロセスによって達成されるものです。

したがって、査読プロセスへの参加は2つの方法で行うことができます。

1つは、査読のために原稿を提出することです。これは、論文を募集している会議やジャーナルを見つけることで行います。これらは ”Call for papers”(CFP:論文募集)と呼ばれる論文の募集でオンラインで利用できます。この論文募集には、特定の会議が何を求めているのか、投稿された研究を評価する専門家グループは何か、評価されるために投稿された原稿が満たすべき組版(レイアウト?)の詳細についての説明があります。これはオープンプロセスであるため、誰でも査読のために原稿を提出できます。

一方、専門家としての参加は招待制で、特定の分野の科学研究の発展に何年も貢献した場合にのみ与えられます。例えば暗号学の場合、プログラム委員として参加するのは、大学や研究所で長年研究を行い、暗号学の教鞭を執り、その分野で多くの重要な結果を残し、仲間に認められた人たちです。このように暗号の科学分野に貢献した後、通常その会議のプログラム委員に招待されるのです。そしてこのイベントは実際に名誉であり、Crypto、Eurocrypt、Asiacryptのような会議のプログラム委員会のメンバーを務めることは、人々が誇りに思うことです。

査読(ピアレビュー)は暗号資産にとって重要です。

なぜなら、この分野の成熟を可能にし、実装され、ユーザーに価値をもたらすプロトコルが実際に信頼できる強固な基盤を築くことができるからです。堅牢で障害に強いシステムを作ることは非常に重要であり、システムが現在機能しているという事実だけで、必ずしもそれが続くという証明にはなりません。長期的には、これらのシステムが攻撃に対して回復力があることを科学的な暗号研究によって提供されるものとして、適切な保証をすることが非常に重要です。そのためには、暗号資産や分散型台帳の安全性を分析し、安全で障害に強い運用が可能であることを証明できるようなモデルを構築することが重要なのです。したがって、この科学的プロセスによって提供されるこれらのツールを使えば、システムが攻撃されることはなく、システムが記録する資産が危険にさらされることはないと確信できます。

翻訳は以上です。

簡単なまとめ4コマ

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