本内容はInput OutputのYoutube「IOHK | アフリカにおけるブロックチェーンのビジョン」の日本語翻訳字幕を繋げたものです。(動画投稿は2018/05/14)
私が暗号通貨の分野に足を踏み入れたとき、暗号通貨を構築する意味や全体的な目的について深く考え始めました。暗号通貨は人を本質的には信用しないシステムを展開し、中央集権を排除しようとしています。米ドルやユーロに対抗するお金を作ればいいとか銀行を全部潰してなんとか貸し出しの方法を作ればいいとか、そういう話ではありませんでした。
これらは学術的にも興味をそそられる概念ですし、確かに競争と金融政策は興味深いものです。しかし現実は西欧諸国のシステムが好きか嫌いかにかかわわず、非常に悪いシステムの中で生活している人たちが大勢いて約30億人が銀行口座を持っていないのです。優れたID、インフラ、金融インフラを持たない結果、貧困から抜け出すことができません。相当な援助を受けるか国を離れて頭脳流出を起こさない限り。
暗号通貨の世界に入って最初に考えたのは、「この技術で実際にどう途上国の問題を解決するか」ということでした。のこのこ出かけて行って、「私には何もかもすべて分かっているから私のいうことを聞きなさい」というこれまでのやり方は無残な結果に終わってきました。
その代わりに、このテクノロジーに所有者はいません。このテクノロジーに失敗のもとになるような中央権力はありません。このテクノロジーは誰かにコントロールされてはいません。これはグローバルなインフラで、どんなに金持ちであってもどんなに貧乏であっても同じインフラを使うのです。まるでニューヨークの地下鉄のように、金融界で最も裕福な男もいればホームレスもいる。同じインフラを使っているのです。これは暗号通貨の話でも基本的には同じコンセプトです。
4年ほど前、私はバミューダでTED Talksを行いました。その講演の目的は、なぜ暗号通貨を面白いと感じたのかを説明することでした。ICOのための単なるからくり装置ではありません。ニューヨークのきらびやかな会議に適したトピックというだけでもありません。これは、もし忍耐力があり、欲求があり、失敗や実験に対する意欲があり、少しの勇気を持って発展途上国に行けば数年、3年、5年、10年という期間内にこの技術を人々に教え自分のものにさせることができるというようなものです。そうすれば彼らが自分で現地のあらゆる問題を解決することができます。それが4年前に抱いた仮説でした。
IOHKの設立時、Jeremyと私は常に発展途上国で何かをしたいと考えていました。しかし、十分な勢いと収益、十分なインフラを自社内に構築し、さらにCardanoを構築してこの市場に正しく参入できると感じられるようになるまでには数年を要しました。アルゼンチンから始めてバルバドスを経て、現在はアフリカで最も人口の多い国のひとつであるエチオピアに進出しています。これがアフリカ大陸への参入のきっかけとなりました。
では、なぜエチオピアなのかというと、エチオピアは非常に古い歴史を持つ国で多くの素晴らしい繋がりを持っています。地政学的にも重要な位置にあり、アフリカ連合があり、ユニセフがあります。素晴らしい貿易関係を持つ国であり、大陸的な視点を持つ国でもあります。アフリカには少し孤立しがちな国もあれば、自分のいる土地の運命にリーダーシップを発揮する国もあります。アフリカでビジネスをしたいと思ったら南アフリカやエチオピアの様な必ず訪れるべき場所、拠点とすべき場所があります。そこで私たちはこの地に拠点を置き、起業家や開発者、プロジェクトのネットワークを構築して私たちのテクノロジーの価値をアピールすることが有効だと考えました。
エチオピアを選んだもうひとつの理由は、エチオピアには未だに多くの貧困層が存在し、国の4分の1が貧困、またはそれに近い状態にあるからです。また、インフラにも大きな問題があり銀行口座を持たない人の割合も非常に多いです。そして調査によると大きな人道的危機に直面しています。エチオピアは人口急増問題にも悩まされています。わずか1世紀間で、人口は約1,000万人から1億人に増加しています。その結果、19~20世紀転換期にあった生物多様性の約90%が失われました。この国は文字通りライオンを国のシンボルとしていますが、野生のライオンは1,000頭しか残っておらず、野生のキリンも1,000頭ほどしか残っていません。持続可能な成長に対応しきれていない国、グローバリズムの結果に対応しきれていない国です。ですから私たちの技術を導入するには非常に良いターゲットだと考えました。
では、その進め方ですが、最初のステップは何も仮定しないこと。先入観を持たず、初心者の気持ちで始めます。そして、一緒に仕事をする優秀な人たちを見つけます。大学や科学技術省に協力を仰ぎ、優秀な学生を集めてもらう。こちらもケンブリッジ大学やオックスフォード大学、エディンバラ大学などの優秀な人材を連れて行って、技術がどのように役立つのか、プログラムやHaskell、ブロックチェーンがどのように作用するのかを彼らに教えます。彼らが知識を身につけらたら、自分たちが日常的に直面している問題について考えさせます。
例えば、エチオピアは世界屈指のコーヒー生産国です。この国を支えているのはこのアグリテックビジネスなのです。コーヒーは国にとって大きな換金作物であるにもかかわらず、その実態は実に寂しいものです。ほとんどの農園は1ヘクタール(100m×100m)程度の広さで、約150万人の人々がコーヒーを栽培していますが、品質は安定しておらず、サプライチェーンには様々な問題があり、コーヒーの栽培方法はサステナブルではありません。例えば、切り倒すべき木が切り倒されずに残っていたりなど。その結果、人々はぎりぎりの生活を強いられており、生育不良シーズンがあると、大きな問題が発生します。
例えば、サプライチェーン管理にブロックチェーンを導入することができれば素晴らしいでしょう。農協を作り適切なIDを取得できるようにして、クレジットや保険、前払い金などに利用できるようなシステムを構築できないかと考えています。小さな変化で、場合によっては収穫量を2~300%増やすことができます。また、コーヒーの価格も安定し、変動が少なくなります。普通の人にとっては少し稼ぎが増えるだけかもしれませんが、ここの人にとっては飢えるか否かの死活問題であると同時に、世代を追うごとに教育を受け、実際に富を築き、貧困から抜け出すことに繋がるのです。
私達の技術はそのような物語の一部になれる可能性が高いと考えています。IoTやAI、それに多くの組み込み機器など他の技術も確かにあります。電力網とインターネット接続の両方における間欠性(常時利用できるわけではない様)の問題を解決する方法を見つけなければなりません。それを考えるのは確かに刺激的で、ぜひ参加したいと思っています。
しかし、すべての核となるのは信頼と協調です。人々が時に相反するインセンティブを持っているという事実にどう対処すればよいのでしょうか?買い手は常に売り手を欺こうとし、売り手は常に買い手を欺こうとする。ビジネス関係は略奪的であり、短期的である。中央集権的な調整が不要な、より良い構造、より良いガバナンスを構築できれば、これらの問題は解消され、より強く、より良い市場を構築することができます。その結果、人々の立場は総合的に向上し、回復力が増します。さらにこのようなインフラが整備されれば、自然保護や持続可能性、生態系の持続可能性について会話を発展させられるようになります。そうすれば私たちは環境を破壊し続ける必要はありません。そして、次々と種が絶滅していくのを見続ける必要もないのです。
素晴らしいのは、ここで成功すれば、アフリカや世界の他の地域でも成功するということです。ですから、これは非常に大きな挑戦なのです。それは社会的な問題です。 ゲーム理論的な問題でもあり、市場の問題でもあり、技術的な問題でもあります。インターネット上に常に存在し、携帯電話で使えるようデジタル化されたお金、でもその電話は必ずしもネットに繋がっているわけではない。これは難しい。研究者や技術者の負担になるでしょう。しかし、結局のところ、あなたという人間を示すのは持つ者のためにしたことではなく、持たざる者のためにしたことです。これが私たちの信条であり、ビジネスの取り組み方です。だからこそ、エチオピアに来れたことを非常に嬉しく思っています。とても長い道のりです。この場所での労働の成果が目に見える形で現れるまでには何年もかかるでしょう。エチオピアだけではなく、ルワンダや他の国にも行く予定ですが、それでもとても興奮します。エチオピアのような場所では長期的に最大のインパクトを与えることができると考えています。特にアグリテックビジネスなどで。
動画の内容は以上です。
以下、エチオピアの簡単な紹介です。
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